本研究では、塔型晶析装置を傾斜させることにより得られた精製能力および安定な操作性の向上を連続操作によって確認し、そのための操作条件を明らかにすることを目的とする。合わせて、装置内の濃度分布を解析して装置設計及び操作設計に必要な精製速度係数を決定し、操作条件との相関を見いだすことを目的としている。 初年度の平成8年度は現有の傾斜型晶析装置に各種のセンサー及びマニュピュレータを取り付け、晶析塔内部の温度分布を詳細に解析できるように改良した。また共晶系(ε-カプロラクタム-水系)を用いて分離と操作条件との関係を定量的に明らかにし、安定な操作性を検討した。主な変数は、傾斜角度、スクレイパ-の回転数、結晶化部の温度条件(=結晶粒子群の懸濁密度)、及び供給母液の組成とした。さらに本年度は晶析塔内での分離精製機構のモデルを作成し、そのモデルにより融液濃度の解析を行うことで従来の垂直型との比較も行った。その結果、1.垂直型に比べ傾斜型の晶析塔は結晶相流れの大きさを大きくできることから分離能力の向上がみられた。2.軸方向拡散係数が小さいことから分離性能を向上できることが明らかとなった。
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