研究概要 |
メンブレンフィルターは種々の素材からなり,その構造も繊維状のものから多孔板状のものまで多様であり,フィルター孔径にも大きな分布があるため,たとえば,孔径1μmのフィルターで1μm以上の粒子は完全に除去できても,1μm以下の粒子の除去率は全く予測できないのが現状である.本研究では,フィルター孔径よりも小さな粒子の除去機構を明らかにするとともに,種々の液体に対してフィルターを使用した場合の捕集効率を保証できる試験法および試験装置を提案することを目的とした.試作したフィルター試験装置は,2台のパーティクルカウンター(可測最小粒径0.1μm,サンプリング流量10ml/min),試験用粒子(単分散PSL粒子)供給装置からなり,フィルター出入口での粒子濃度を同時に測定して捕集効率を測定するものである.本研究で得られた成果を要約すると以下のようである.(1)フィルター孔径よりも小さな粒子の捕集効率は,ろ過速度,電界質濃度(液の電気伝導度),フィルター素材によって大きく変化する,(2)多孔板状のフィルターの場合,孔径より十分小さな粒子はブラウン拡散によってフィルター表面へ輸送され,フィルター表面と粒子の正電気反発力(電気二重層による力)によって捕集されるか否かが決定される,(3)液に界面活性剤を添加することにより,フィルター表面への粒子の付着はなくすことができ,孔径よりも小さな粒子はすべて透過する,したがって,界面活性剤の添加により最低限のフィルター捕集効率を保証できる,(4)繊維状フィルターの場合,ろ過速度が大きくなるほどフィルターの表面電位が小さくなり,捕集効率は大きくなる.以上の結果より,メンブレンフィルターの捕集効率は,電気二重層による反発力とvan der Waals力による引力を考慮したDLVO理論では予測できず,これらの力の作用下で粒子の運動を求めなければならないことがわかった.
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