モリブデンの硫化物クラスター錯体のうち立方体の一頂点が欠けた不完全キュバン型モリブデン硫化物クラスター[Mo_3S_4(H_2O)_9]Cl_4およびNiを取り込んだ混合金属のキュバン型クラスターをゼオライトにイオン交換的に担持することにより触媒のミクロ構造を制御した触媒を調製し、水素化脱硫反応における高度な機能の実現を目指した。担体としてはイオン交換能を有するゼオライトと対照実験としてのアルミナを用いた。Mo_3S_4(H_2O)_9]Cl_4を種々のゼオライトにイオン交換により担持することができた。イオン交換が起こっていることは交換されて溶出するアルカリおよび塩素イオンの量から確認できた。ゼオライトの構造の破壊は起こらなかった。Y型やベータ型にくらべてL型やモルデナイトはイオン交換の進行度が小さく20%程度であった。これは12員環細孔の大きさがやや小さいことと一次元細孔であることによると考えられる。ベンゾチオフェンをモデル化合物として水素化脱硫反応を行ったところ、担持率が小さいにもかかわらず、L型に担持した触媒が高い水素化脱硫活性を示すことが分かった。この理由はゼオライトの結晶外表面近傍にイオン交換が起こっているためであることが電子顕微鏡観察により明らかになった。アルミナに担持した場合にはKLに担持した場合よりも活性が低かった。これはイオン交換が起こり得ないため分散度が低いことと塩素の残存が原因である。Niを含んだ混合クラスターを用いることにより水素化脱硫活性が大きく向上した。Niを別にイオン交換担持した場合には顕著な効果がなく、EXAFS測定よりNi-S-Mo結合の重要性が明らかになった。
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