研究概要 |
塩化銅(I)を触媒に用いる金属ケイ素とメタノールからのトリメトキシシラン直接合成について研究代表者ならびに分担者が従来提案してきた反応機構に関する知見を基に,金属ケイ素と塩化水素との反応を行うとともに,この反応系にエチレンやアセチレンなどを添加することによって有機ケイ素化合物が直接合成できることを見出した. 例えば,金属ケイ素と塩化銅(I)の粉末混合物を固定床流通系反応装置に仕込み,塩化水素5mmol h^<-1>とエチレン10mmol h^<-1>を533Kで5時間流通させると,エチルジクロロシランを選択率21%で合成することができた.この反応では,仕込んだ金属ケイ素の54%が反応し,エチルジクロロシラン以外のケイ素化合物として,トリクロロシランならびにジクロロシランが生成した. また,エチレンではなく,アセチレンを用いると,炭素-炭素二重結合を有するビニルジクロロシランを得ることができる.すなわち,塩化水素のみを15mmol h^<-1>,513Kで流通して金属ケイ素を活性化した後,塩化水素に加えてアセチレンを3mmol h^<-1>で3時間流通させると,ビニルジクロロシランを選択率23%で合成することができた.このときの金属ケイ素の転化率は31%であり,ビニルジクロロシラン以外の有機ケイ素化合物としてエチルジクロロシランが選択率11%で生成した. 金属ケイ素とメタノールからのトリメトキシシランの直接合成の場合と同じように,金属ケイ素と塩化水素の反応においても反応中の金属ケイ素の表面には表面シリレン種が生成し,これがエチレンやアセチレンと反応することによって,以上のように有機ケイ素化合物が生成するものと考えられる.
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