研究課題/領域番号 |
08455377
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
王 征宇 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10213612)
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研究分担者 |
小林 正幸 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (70271864)
野澤 庸則 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10006322)
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キーワード | 光合成 / 小角散乱 / 色素 / 光捕集器官 / 会合体 / 光合成細菌 / エネルギー変換 |
研究概要 |
光生物のアンテナ器官中の色素分子は、通常一定規模の会合体を形成して、光エネルギー伝達の役割を果たす。従来、色素会合体の構造に関する研究には主に振動と共鳴分光法が用いられてきた。本研究では前述の分光法に加え、溶液中及び固体粉末中における色素会合体の構造解析に最も有効な散乱法と核磁気共鳴法(NMR)を適用してみた。平成8年度の実験では、溶液状態における二種類の色素分子(BChlc,a)について、単量体と二量体のサイズを初めて突き止めた。平成9年度には、前年度の結果を踏まえて、高分解能NMRより溶液中におけるBChlc二量体の原子レベルの情報が得られた。四塩化炭素中では、BChlcが非対称なダイマーを形成し、その構造は極めて安定であるため、よく分離されたシグナルを観測することができた。磁化移動、2次元同種・異種核相関の測定より、完全なBChlcダイマーにおける^1H-と^<13>C-NMRの全ケミカルシフトの同定を行った。その結果、会合体の形成に伴い、クロリン環同士に生じた立体障害に対処するため、メソ位以外の自由度の高い置換基は多彩な挙動を示すことを判明した。ファルネシル長鎖エステル基も、会合体コアの部分と離れることなく、クロリン環と絡み合っていることがわかった。さらに、特定の官能基における分子間NOE効果が観測されたことから、ダイマー中におけるそれぞれの分子の精密な配置関係の解明に有用な手がかりを与えるものと期待できる。 一方、ジクロロメタンから得られた薄膜状のサンプルの結晶性が良いことから、BChlcについてCP/MAS NMRの測定を行い、分解能の高いシグナルが得られた。今後分子間における各官能基間の距離を測定するにより、高次会合体における複雑な色素配置構造の解明に向けて、より正確な情報の獲得に取り込む予定である。
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