95℃以上の高温でも生育できる超好熱始原菌が生産する蛋白質の耐熱化機構を明らかにする目的で、様々な酵素遺伝子のクローニングを試みた。その結果、グリセロールキナーゼ、リボヌクレアーゼH_2、ズブチリシン、RecA蛋白質等の遺伝子をクローニングすることに成功した。このうち、RecA蛋白質については、大量発現系を構築し、酵素を精製した。RecA蛋白質はDNAの相同的組み換えに必須であるが、一本鎖DNAと結合することによりATPase活性を示すことが知られている。しかし、超好熱菌由来RecA蛋白質はDNase活性を持っており、一本鎖DNAに結合するどころかこれを分解してしまうこと、さらには、DNA非存在下においてもATPase活性を示すこと等ユニークな性質をもつことが明らかになった。また、DNase活性を目印にしてその安定性を調べることにより、本酵素の耐熱性は比較的低いことが示唆された。本酵素の至適温度も60℃とかなり低い。一方、既にクローニングされ大量発現系も構築されているアスパルチルtRNA合成酵素について、酵素活性の至適温度を調べたところ、やはり65℃とかなり低かった。しかし、この至適温度はポリアミンを加えることにより約10℃上昇することが見いだされた。CDを用いて本酵素やtRNAの安定性を調べることにより、いずれも70℃では変性しないことが示されたので、ポリアミンは本酵素とtRNAの複合体を安定化するものと思われた。以上の結果、超好熱菌菌体内において酵素が機能するためには、ポリアミンを初めとする様々な補助因子の存在が必要であることが示唆された。今後、グリセロールキナーゼ、リボヌクレアーゼH_2、ズブチリシン等についてもその耐熱性を解析する予定である。
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