高度不飽和脂肪酸含有脂質の微生物による生産及び利用技術の開発

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08455384
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 鈴木 修 広島大学, 工学部, 教授 (00274126)
• 研究分担者: 秋 庸裕 広島大学, 工学部, 助手 (80284165) ; 重田 征子 広島大学, 工学部, 助教授 (10034381) ; 小埜 和久 広島大学, 工学部, 助教授 (10144883)
• キーワード: ドコサヘキサン酸 / Δ6デサチュラーゼ / Schizochytrium sp. / アレルギー / 高度不飽和脂肪酸 / トリアシルグリセロール / 血漿脂質 / リン脂質

研究概要

C22高度不飽和脂肪であるドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6)の微生物による新しい生産技術が要請されている。既に海水から見い出されたDHA含有油脂の生産海洋菌Schizochytrium sp. SR21について、脂質生産のための培養条件および高生産菌への育種並びにDHAの生合成機構について検討した。
SR21は種々培養条件の検討の結果、グルコース(60g/L)を炭素源として、ファーメンターを用いた56時間の回分培養でグルコースはほぼ消費され、菌体増殖量は23g/Lが得られた。その脂質含量は60%を越えており、蓄積された脂質の95%はトリアシルグリセロールであった。その組織脂肪酸中のDHA含量は35%であり、培地当たりのDHA生産量は4.5g/Lの値が得られた。また、SR21の遊走子をNTG処理することにより得られた変異株より、その脂肪酸組成のGLC分析からDHA含量の高い変異株を選択した。その結果、DHA含量が43%と野生株よりも高く、菌体増殖量、脂質含量ににおいてほぼ匹敵する菌株MS13-1を見出した。ジャーファメンター培養においてSR21の1.3倍のDHA生産性が得られた。
高度不飽和脂肪酸生合成機構の解明のため、その生合成の鍵となるリノール酸からγ-リノレン酸への変換酵素であるΔ6デサチュラーゼ遺伝子の藍藻からの取得に成功した。引き続き、糸状菌などからのデサチュラーゼ遺伝子の取得とその酵母での発現について検討した。さらに、DHAなど高度不飽和脂質(PUFA)の生体内における機能を、特にアレルギーとの関係について調べるため、広島市内の鷹の橋中央病院と共同で、アレルギー患者の血漿および血球のリン脂質における脂肪酸組織を分析した。その結果、血漿でのアレルギーの原因となる特異IgE量を表すRAST値とDHA含量が相関しており、RAST値の上昇に伴って、DHA含量が減少していることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] I. Ida, T. Nakahara, et al.: "Improvment of Docosahexaenoic acid Production in a Culturer of Traustochytrium aureum by Medium Optimization" J. Ferment. Bioeng.81 (1). 76-78 (1996)
• [文献書誌] O. Hiruta, Y. Kamisaka, et al.: "γ-Linoleic Acid Produotion by a Low Temperature Resistant Mutant of Nortierella oamaniana." J. Ferment. Bioeng.82 (1). 119-123 (1996)
• [文献書誌] O. Hiruta, Y. Kamisaka et al.: "Optimization and Scole-up of γ-Linoleic Acid Production by Mortierella ramaniona MM15-1, High γ-Lincleic Acid Production Mutmut" J. Ferment. Bioeng.82 (4). 366-370 (1996)
• [文献書誌] S. Fujii, K. Ono et al.: "B cell Mitogenic Activity of House Dust Mire, Dermatophagotdes torinue, Antigens." Immunology Letters. 49. 37-42 (1996)
• [文献書誌] O. Suzuki, et al.: "Production of hipid by Mictoorganisms, Industrial Application of singl & Coll Oils" Proceedings of the 1996 PORIM International Palin Oil Congress,. 1996. (103-113)