研究概要 |
本研究の目的は,一様な低剪断場で大規模培養に適したエアリフト型気泡塔でのニンジン細胞培養によるβ-カロチン生産を例として,細胞増殖とβ-カロチン生成に及ぼす各種操作条件の影響を調べ,β-カロチンの含量,収量と生産性の点から各操作因子の最適値を決定するとともに,培養経過の予測や最適培養条件の探索のために比較的簡単な速度論モデルを確立することである。分担課題毎の本年度の成果は次のとおりである。 1.浮遊ニンジン細胞の増殖,β-カロチン生成と装置形状,操作条件の関係。 前年度で得た各操作因子の最適値を組み合わせた最適条件でのエアリフト培養を行った結果,細胞増殖,β-カロチン含量ともにコントロールよりも著しく増大した。培養経過は先の速度論モデルで再現できた。培養初期では高温ほど,後期では低温ほど増殖,β-カロチン含量ともに優れていた。温度シフトする2段階培養が提案された。α-カロチン含量は無視できた。エアリフト気泡塔の特性解析も行った。 2.固定化ニンジン細胞によるβ-カロチン生成と装置形状,操作条件の関係。 3種のアルギン酸カルシウムゲル粒子中に固定化した細胞のフラスコ培養を行い,浮遊細胞と比較した結果,増殖とβ-カロチン含量はそれぞれ1/2〜1/3と1/5〜1/10に低下した。アルギン酸塩が高分子量ほど増殖は遅い反面含量は高かったことから増殖と生産の間の負の相関関係が確認された。 3.ニンジン細胞の各種培養操作の比較と最適条件の探索。 寒天培地上の固体培養を行った結果,β-カロチン含量は浮遊細胞の高々1/10程度であった。4種の細胞株の比較から,増殖と生産の負の相関関係が確認されたが培養方法の違いによる増殖の大きな低下が含量の顕著な増加をもたらさないことも判明した。コントロール条件に基づいた各速度論パラメータ値の無次元相関式を提出し培養経過の予測や最適培養条件の探索を可能にした。
|