研究概要 |
今後のオプトード開発においては光スペクトルから様々な多情報を得ることができる色素の設計が重要であると考えられるため、本研究では、新規センシング材料として、新しい設計概念を取り入れた多元情報色素(Multi-information dyes:MIDs)の合成と機能評価を行った。合成に先立って分子設計上考慮したポイントは以下の通りである。1)一分子中に共役系を介してプラスとマイナスの異符号の電荷を持たせることにより,様々な光スペクトル変化を誘起させる。2)色素分子の共役系に直接関与する位置に電子供与性及び吸引性の官能基を系統的に導入することにより,光スペクトル変化をコントロールする。3)センサーデバイスへの応用を容易にするために、ポリマーなどへの固定化に有効なサイトを持たせる。この様な分子設計に基づき、主としてメロシアニン系の12種類のMIDsを設計、合成した。そして、それらの色素と種々の物質との相互作用を調べることによって、色素の化学構造と吸収スペクトル情報の相関を求めた。 この結果を基に、開発した色素を利用して様々なオプティカルケミカルセンシングの応用へと展開した。その結果、以下のような特性及びセンシング応用が可能であった。1)水分中のアルコールセンシングへの応用:MIDsを可塑化PVC膜(膜溶媒:NPOE)に包括させてアルコールセンシング膜を作製し、水溶液中のエタノール濃度の測定を可能とした。2)アニオンセンシングへの応用: プロトンとアニオンの協同抽出を利用したアニオン濃度測定を行った。可塑化PVC膜(膜溶媒:BEHS)にMIDsを包括させてアニオンセンシング膜を作製、水溶液中の過塩素酸イオン濃度の測定を可能とした。 このように、MIDsは新規情報素子として様々な物質センシングに応用が可能である。
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