研究概要 |
高等植物およびラン藻の光合成系I反応中心(P700)あたり当研究室で2分子検出した新規色素クロロフィルa'の機能解明を目的に,生体内(in vivo)での生合成プロセスの追跡と,生体外(in vitro)における物性の解明を進めた. 前者では,黄化葉への光照射で進む反応中心複合体の形成プロセスにつき,オオムギ・キュウリなどの芽生えを試料として,光照射開始後に進行する色素の相対量の経時変化を順相および逆相HPLCシステムを用いて詳細に計測した.クロロフィルa'の相対量は,光照射開始から短い時間内(おおむね1時間以内)に急増し,成熟植物体中のおよそ2倍のピークをとることより,系Iコアの構成分子であることを確認することができた.付随して,系II反応中心の初期電子受容体であるフェオフィチンaの生合成プロセスも追跡し,系Iにやや遅れて系II反応中心が形成される事実を見出した. 後者では,ジオキサンを含む界面活性剤水溶液中でのクロロフィルa'の分子会合挙動を,可視吸収・蛍光特性,円偏光二色性,共鳴ラマン散乱などで調べた.数十〜数百個の分子が電子的カップリングした大きな会合体(ポリマー)を作る通常のクロロフィルaと異なり,クロロフィルa'の会合体は単位構造がずっと小さく,二量体が基本であると推定した.
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