1.クロロフィルa'は水性アルコール中や界面活性剤水溶液中で、通常のクロロフィルa'とは大きく異なり、二量体を基本単位として会合することを確認した。これにより、系I反応中心(P700)がクロロフィルa型色素の二量体だとする従来からの通説に照らせば、クロロフィルa'の二量体がP700そのものを構成している可能性が高まった。ただし、生体中の環境(疎水的な構造タンパク質の内部)と人工環境は本質的に別物であるため、クロロフィルa'の真の機能を断定できるには至っていない。 2.オオムギやキュウリを試料とし、暗所で芽生えた黄化葉への光照射で始まる光合成器官形成の初期過程につき、ごくわずかしか生成しない段階におけるクロロフィル類の一連の生合成中間体(側鎖が段階的に還元されていく途上のもの)を明確に分離同定できる高速液体クロマトグラフィー条件を整備した。 3.上記の条件を用い、グリーニング過程についてクロロフィル類とP700の量を詳しく追跡した結果、まずクロロフィルa'の相対量が光照射1時間程度で急増し成熟葉の2倍以上(約1%)に達したあと一定量に漸近することより、クロロフィルa'が光合成器官コアの必須分子として生合成されることを確認した。また、同時にグリーニング途上におけるP700の量も計測したところ、ごく初期を除いて分子数比クロロフィルa'/P700は2となり、クロロフィルa'が光化学系Iの反応中心の機能分子であることをさらに確認した。
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