近年ダイヤモンドは、その化学的安定性やホウ素のド-ピングによる導電性から電気化学においてHOPGやグラッシーカーボンなどのsp2 炭素材料に次ぐ新規の炭素電極材料として注目され始めてきた。これまでに、ダイヤモンド薄膜の電気化学特性として、(1)水溶液において、水素過電圧・酸素過電圧が大きい、(2)レドックス系に対する応答が良い、(3)バックグラウンド電流が小さい、など電極材料として優れた特性を有することが報告されている。本研究ではマイクロ波CVD法で作製したホウ素ドープp型ダイヤモンド電極の光電気化学特性を明らかにし、その応用を検討した。 ダイヤモンドは約5.5eVのバンドギャップを有するため、ホウ素を少量だけドープしたB/C=10ppmのダイヤモンド薄膜はp型半導体としてふるまう。193nm(6.4eV)という短波長の光を発生するArFエキシマーレーザー光をこのp型ダイヤモンド電極表面に当てると、暗所では非常に起こりにくかった水素発生が+1Vvs.SCEという非常にプラスの電位で起こることがわかった。一方、KrF(波長248nm/5.0eV)やXeF(波長351nm/3.53eV)では光電流がほとんど観測されなかった。この結果からArFを用いた場合はダイヤモンドの価電子帯から伝導帯へのバンド間励起が起こり、光励起でダイヤモンドの伝導帯に生成した還元力の大きな電子が水の中のプロトンと反応して、水素ガスが生成したものと考えられる。またこの電極のインピーダンス測定を行い、Mott-Schottkyプロットからフラットバンド電位を求めると0.9±0.1Vvs.SCEであったことから、ダイヤモンドの伝導帯は約- 4.20Vvs.SCEと非常に卑であることがわかった。このようにホウ素の含有量が少ないp型のダイヤモンド電極は、光励起によって非常に還元力に富んだ表面になることがわかった。 その他、ダイヤモンド電極をバイオセンサーとして応用する研究も行った。
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