本年度はまず電極反応速度の測定に用いるための金、および白金電極の作製を火炎溶融法により行い、(111)の面方位を有する電極を得た。また、これら以外の(110)や(100)電極については、既存の装置では方位の決定が困難であったので、分光野測定のために購入した電極を用いることにした。また、次年度で用いる電気化学測定系の構築を進め、定電流ダブルパルス法に加え、定常状態下で測定を行うため装置的に前述の方法より簡単であると考えられる走査型電気化学顕微鏡(SECM)に関してもその適用性を検討している。一方、新たに購入した高感度赤外線検出器を用いて、白金(111)電極表面でのSO_4^<2->やCO_3^<2->などの電解質イオンの吸着状態の検討を行い、サイクリックボルタモグラム上に現れる特異な水素波とアニオン吸着との関連性を明らかにした。さらに、電極界面における水分子の挙動にも着目し、多結晶金電極界面におけるハロゲン化物イオンの特異吸着の影響、さらにはこれらアニオンや一連のアルカリおよびアルカリ土類金属イオンの有する構造形成・構造破壊性と界面での水の構造との関連性を明らかにすることができた。また、in situ赤外反射測定に用いる薄層構造のセルを用いる場合に必然的に生ずるir降下の問題に関しても理論的検討を行い、二重層の充電に要する時定数に及ぼす薄層溶液の抵抗率や二重層容量等の実験パラメーターとの関係を定量的に評価する事ができた。現在、STMによる電極表面構造の評価を進めている。
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