研究概要 |
前年度までに、その場赤外吸収分光測定のための光軸および測定系の設計および設置を完了した。また、非水電解液を用いたリチウム金属の表面の動的変化について測定を行った結果、この測定装置で十分に目的とする固体高分子電解質の電極界面における動的な挙動を観察することができることが分かった。そこで、本年度はKRS-5あるいはZnSeのプリズム型の窓材にPt電極を直流スパッタリングにより取り付け、その上に高分子固体電解質の一つであるNafion膜を形成し、Pt/Nafion界面を作製した。この電極系を用いてNafionのPtへの接合について検討を行った。 Nafion溶液から膜が形成されていく時の動的な挙動のその場観察を行い、フルオロカーボン直鎖およびスルホン酸基に関する吸収の測定に成功し、接合状態に関する知見を得ることができた。さらに、これに電解液を加えることによってもその界面を構成するフルオロカーボン直鎖およびスルホン酸基の割合が変化することが分かった。このように、高分子固体電解質とPt電極の界面の状態は固体高分子電解質内に含まれる水分量により大きく変化することが分かった。 次に,Pt/Nafion界面に電位をかけてその変化について測定を行った。水素発生の電位から酸素還元の生じる電位領域においてはPt/Nafionの界面構造は大きく変化することなく、一定であった。しかし、水素電極に対して約1.2V程度の電位を印加したときから大きく変化し、より親水的な界面が形成されることが分かった。一方、酸素還元を行った場合のPt/Nafion界面においては、電位が水素電極に対して0.8V程度しか印加されていないにもかかわらず界面での親水性基および疎水性基の状態は変化し、電極反応により界面が動的に変化していることが分かった。
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