層間包接半導体擬似分子の創製と光化学特性評価

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08455403
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 佐藤 次雄 東北大学, 反応化学研究所, 教授 (90091694)
• 研究分担者: 藤代 芳伸 東北大学, 反応化学研究所, 助手 (90271999) ; 内田 聡 東北大学, 反応化学研究所, 助手 (60232849)
• キーワード: H_4Nb_6O_<17> / H_2Ti_4O_9 / インターカレーション / TiO_2 / Pt / 光触媒 / 水の完光分解 / 電子移動

研究概要

層状化合物H_4Nb_6O_<17>およびH_2Ti_4O_9の層間へTiO_2およびPtを包接したナノ複合体を作製し、得られた複合体の光化学特性について検討した。層間に包接されたTiO_2とPtはいずれも厚み1nm以下の超微粒子であった。TiO_2にPtを担持すると優れた光触媒活性を示すことが知られているが、この触媒は水中分散状態では水を光分解することができなかった。これは、Pt上で水素と酸素の再結合(水の分解反応の逆反応)が速やかに進行するためである。しかし、本研究で合成した、H_4Nb_6O_<17>およびH_2Ti_4O_9層間にTiO_2とPtを包接したナノ複合体は、3eV以上のエネルギーの光照射によって水を完全光分解できた。これは、Ptを層間に包接することにより、水素と酸素の反応を仰制できたためである。TiO_2を包接した試料はいずれも375nmのレーザー光照射により400-700nmの波長のブロードな蛍光を発生することを見い出し、それらの蛍光減衰曲線をナノ秒オーダーの高速で測定することにより、層間のTiO_2からホスト層状化合物H_4Nb_6O_<17>およびH_2Ti_4O_9へ10^8/secオーダーの高速で電子移動が進行していることを見い出した。これにより、本研究で合成されたナノ複合体の優れた光触媒活性は、ゲスト半導体からホスト層への電子移動により、電子と正孔の分離が効率よく行われたためであることが明かとなった。

研究成果

• [文献書誌] S.Uchida, Y.Yamamoto, Y.Fujishiro, A.Watanabe, O.Ito and T.Sato: "Intercalation of Titanium Oxide in Layered H_2Ti_4O_9 and H_4Nb_6O_<17> and Photocatalytic Water Cleavage With H_2Ti_4O_9/(TiO_2,Pt)and H_4Nb_6O_<17>/(TiO_2,Pt)nanocomposites." Journal of Chemical Society Faraday Transaction. 93. 3229-3234 (1997)
• [文献書誌] 佐藤次雄: "層間包接半導体クラスターの光化学特性" 化学. 52. 72-73 (1997)
• [文献書誌] S.Yin, Y.Inoue, S.Uchida, Y.Fujishiro and T.Sato: "Crystallization of titania in liquid media and photochemical properties of crystallized titania" J.ournal of MaterialsResearch. 13(印刷中). (1998)
• [文献書誌] T.Sato, S.Uchida and Y.Fujishiro: "Photochemical Properties of Montmorillonite and Other Layered Compounds Incorporating Cadmium Sulphide and Zinc Sulphide in the Interlayers." Proceeding of 11th International Clay Conference. (印刷中). (1988)
• [文献書誌] Y.Yamashita, K.Yoshida, M.Kakihana, S.Uchida and T.Sato: "Polymerizable Complex Synthesis of BaTi_4O_9/RuO_2 Photocatalysits at Reduced Temperatures:Factors Affecting the Photo-Catalytic Activity for Decomposition of Water." Journal of Chemical Society Faraday Transactions. 94(印刷中). (1998)
• [文献書誌] 佐藤次雄、内田聡、藤代芳伸: "インターカレーション材料の合成と光化学特性" ニュウセラミックス. 11(印刷中). (1988)