研究概要 |
通常炭素化法と、塩化アルミニウム系溶融塩炭素化法を用いて5員環含有デカシクレンから炭素化試料を調製し、さらに高温でも炭素化処理を行った。得られた試料の構造をラ-マンスペクトル、X線回折、ESR,FT-IRを用いて解析した。これまで炭素芳香族平面中に組み込まれた5員環構造を検出する方法は確率されていないが、本研究ではラ-マンスペクトルの1470cm^<-1>付近に現れる吸収がこの構造に帰属すると断定し、この吸収にもとづいて炭素化過程における5員環構造の影響を検討した。その結果、1)5員環構造による吸収は580℃前後で最大になり、それ以上高温では減少する。2)5員環構造は炭素化初期の段階で芳香族平面の拡がりの増大に寄与する。そして、3)炭素化、黒鉛化過程における積層厚さの変化は、5員環よりも炭素化時における溶融の有無に強く依存する、等の点を明らかにした。 ついで電解重合法を用いて脂肪族性5員環を有するフルオレンポリマーフィルムを調製し、その炭素化・黒鉛化挙動を検討した。5員環の存在は上述のラ-マンスペクトルの吸収とFT-IRのメチレン基の残存から確認した。得られるフィルムは典型的難黒鉛化性を示したが、フィルムの一部でヘア-ピン状の積層構造が観察され、黒鉛化処理後も残存した。ヘア-ピン状の湾曲をもつためには5員環構造の組み込みが不可欠であり、また他の部分にも5員環構造の存在が示唆され、これが難黒鉛化性をもたらしたと結論した。 申請期間中に物性評価をするまでには至らなかったが、5員環を組み込んだ炭素層を構築できることが明らかになった。
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