これまで我々は、BaTiO_3粉末の粒径、TiO_2の添加量、および、熱処理温度を検討することにより、多結晶体中で2次再結晶の起こらない条件を見出し、この条件下でBaTiO_3単結晶育成が可能であることを確認した。しかしながら、成長した単結晶部分では、多結晶体中の気泡を取り込んでしまっていた。 この報告では、育成条件が単結晶の成長速度に与える影響について、また、密度の高い多結晶体を得る目的で行ったHIP処理の結果について述べる。 多結晶体中で2次再結晶が起こらない条件の下、TiO_2の添加量、および、熱処理温度を変化させ単結晶を育成、それぞれの成長速度の比較を行った。この結果、成長速度はTiO_2の添加量の増加に伴い減少し、熱処理温度の上昇に伴い増加していた。TiO_2の添加量、熱処理温度の変化が育成時に生成される液相の量を変化させることを考慮すると、単結晶の成長速度は液相の量と密接に関係していることが明確にされた。このことは、単結晶の成長速度制御が可能であることを示しており、工業的応用の面からも、かなり有益である。 一方、多結晶体中の気泡を取り除くために行ったHIP処理であったが、結果として気泡を完全に取り除くまでには至らなかった。これは、今回行ったHIP処理が無カプセルHIP法で、粉末成形体をあらかじめ通気孔のない状態になるまで予備焼成し、これに処理を行うものであったため、予備焼成の段階でできた安定な閉気孔がHIP時に除去できなかったためと思われる。この気泡を取り除く方法については、今後も研究を継続する予定である。
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