これまで我々は、BaTiO_3粉末の粒径、TiO_2の添加量、および熱処理温度を検討することにより、多結晶体中で二次再結晶が長時間完全に起こらない条件を見出し、この条件下でBaTiO_3単結晶育成が可能であることを確認した。単結晶の成長機構は液相を介した溶解・析出型結晶成長によるものであり、その成長速度は、多結晶体中で生成する液相量の減少および熱処理温度の上昇に伴い増加した。 本研究では、この液相生成量を直流導電率の変化量として評価した。TiO_2添加量の異なるBaTiO_3多結晶体について直流導電率の温度特性を比較した結果、無添加の試料では、導電率が緩やかに増加、減少するのみであった。これに対して、TiO_2を添加した試料では加熱時に1330℃付近で導電率が急激に増加し、冷却時には、加熱時より約30℃低い温度で減少した。この場合、導電率の変化量はTiO_2添加量に比例して増加した。これは、多結晶体中での液相生成量を反映した結果であり、BaTiO_3の共融点を示していると考えられる。Longらは、BaTi0_3多結晶体の電気伝導度を800〜1200℃の温度領域で酸素分圧を変えて測定し、大気中ではBa/Tiによらず1100℃付近を境としてp型からn型に変化することを報告している。また、ErorらもBaTiO_3単結晶について同様の結果を得ている。しかし、本実験で得られた共融点付近での1桁にも及ぶ導電率の増加は電子伝導では説明できない。従って、この現象にはイオン伝導が関与しているものと考えられる。
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