光の波長程度の大きさの反転対称性の欠如が理論的に第2高調波発生(SHG)にとって必要不可欠である。従って、光学的に等方的なガラスかのSHGの発生は、有り得ないと考えられてきた。しかし近年高電圧を高温で印加する事によりSiO_2ガラスからSHGが観測されることが分かった。そこで我々はSiO_2にOHやTiO_2等をドープさせることにより影響を調べた。その結果OHに関しては、その濃度が高いほどSHGの発生強度が大きくなることが分かった。又、このSHGには、ポーリング条件の依存性があり150℃、3kV、2hのポーリングが最も強いSHGの発生を生み出した。一方、TiO_2に関しては、単順にTiO_2含有量の増加に対して増加はしない。つまり、TiO_2の含有量に対して最大値をとる。この現象をTi^<4+>イオンのガラス中の微細構造と比較し検討してみることとした。ガラス中の一つの種類の原子の微細構造を調べるには、放射光照射により得たX線吸収スペクトルを使う解析法が有効である。そこで我々は、高エネルギー物理学研究所でこれらのガラスのTi-Kα吸収端付近のスペクトル構造を構造既知の結晶と比較検討することを行った。Ti^<4+>イオンは、酸素イオンが三角錐配位した4配位とピラミッド型に配位して二重結合を一つ有する5配位位置にあることが分かった。特にプレエッジピーク位置がTi^<4+>イオンの配位状態に関連するのでこの位置を詳しく調べるとTiO_2の含有量が増加すると4配位の割合は増加するが、その濃度を考えにいれるとTi^<4+>5配位の量が最大になるところで、SHGの値も最大になった。ということは5配位Ti^<4+>がこのSHGの起源になっているか、又は重要な関わりがあることを示している。更に、我々は他の酸化物に同種のSHGを起こすことがあるかどうか調べた。その結果Nb_2O_5、PbO、Ga_2O_3を添加したアルカリ珪酸塩ガラスからもSHGが観測された。これらのガラスにもSHG中心があるはずであり、それらの局所構造を今後明らかにする必要がある。
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