無機ガラスは高い透明性と化学的熱的安定性が高く、また、ファイバーや導波路を形成するための賦形性が高いため現在一部実用化され、今後の発展が期待されるオプトエレクトロニクスの中心的部品として用いられている。しかし、更なる情報の多量化、多様化に即した全光系フォトニクスデバイスの研究が注目されている。その中でも特に注目されているのが非線形光学である。非線形光学効果には、主に二次と三次の効果がある。一般に、構造に光学的スケールで反転対称性がある物質には二次の非線形光学効果は理論的に見られないはずである。従って、光学的に等方的と考えられてきた無機ガラスには二次の非線形光学効果はないと考えられてきた。ところが、ガラスに熱ポーリング処理を施すことにより、二次の非線形光学効果の一つである第二高調波発生(SHG)が生じることがわかった。我々は様々な方法で作製したSiO_2ガラスに熱ポーリング処理を行い、SHG強度を調べた。その結果、OH基濃度が上昇する程SHG強度が高くなることがわかった。また、SiO_2にTiO_2を添加した系で同様の実験を行った。SiO_2-TiO_2二成分系は融点が高いためにアルカリ酸化物を添加した。ただポーリング処理を行うために、もれ電流値を抑えなくてはならない。そこで、混合アルカリ効果を示すK_2OとCs_2Oを同モル量加えた。その結果SHGが観測され、TiO_2含有量とプロットすると、TiO_225mol%の時に最大値を示すことがわかった。X腺吸収スペクトルの測定から、これはTiO_2の非対称5配位ピラミッド構造の濃度の最大値と一致しており、これがSHG中心に関与していることが強く示唆された。更に、Ga_2O_3、Nb_2O_5、PbOを含むガラス系でそれぞれSHGが観測された。これらも同様に濃度に対して、SHGが最大値を示し、それらは結合のイオン性と共有性に関与していることがわかった。
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