多孔質アルミナの細孔中に電気化学的にヨウ化銀を堆積させ、コンポジットイオン伝導体を利用して、その組織構造と電気伝導度の関係を調べた。本系では、細孔とヨウ化銀との界面の組織と構造は、電気伝導度に大きな影響を及ぼすと考えられる。そこで、多孔質アルミナを作製後に種々の物質で処理することによる細孔内面の化学修飾、或いは多孔質アルミナの作製条件を変化させることによる生成相の変化等により、アルミナ細孔内面の組織と構造を変化させ、それらがイオン伝導度に及ぼす影響を調べた。有機酸アンモニウムにより処理した多孔質アルミナを用いた場合は、無処理の試料と比較して電気伝導度に対する影響は認められなかった。一方、アルミナ表面で強く化学吸着するクロロトリメチルシランの場合は、電気伝導度の低下がみられたがその程度は非常に小さかった。XPSを用いたアルミナの表面分析によると、有機酸アンモニウムに含まれる窒素の同定はできなかった。一方、アルミナに含まれている不純物であることは完全には否定できないが、クロロトリメチルシランに含まれるケイ素は明確に認められた。これらのことから、アルミナの細孔表面に異種物質が吸着したとしても、その影響は小さいものと考えた。次に、種々の割合でαアルミナ以外の結晶相を含む多孔質アルミナについて検討した。その結果、γやδ相を含む試料において電気伝導度の増大が認められることが分かった。このことは内因的に格子欠陥を多く含む結晶相において、電気伝導度が増大するという説を支持する。しかし、α相の割合を小さくすると、細孔径も小さくなることが分かった。このために現段階では、界面の構造が格子欠陥濃度を高めている機構と、微結晶のために表面の格子欠陥濃度が高まるとの両方の機構が、電気伝導度の増大を説明するのに適用可能である。どちらの因子が支配的であるかを決定するには、さらに詳細な検討が必要であると考えられる。
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