環状のオリゴ糖であるシクロデキストリンの包接能と特異的触媒能に関しては様々な研究が行われているが、大半はエステル加水分解を中心とした結合開裂反応であり、シクロデキストリンを有機合成に利用した例は極めて少ない。我々は、すでに、シクロデキストリンならびにその化学修飾体を一連の芳香族置換反応の触媒として適用し、種々のファインケミカルをほぼ100%の選択性と収率で合成することに成功した。本研究では、反応系内に生成するシクロデキストリン複合体の構造を、走査型トンネル顕微鏡(STM)測定で直接観察することに成功した。シクロデキストリンが、その種類ならびに基板の種類に依存した規則的会合体を形成することが明らかとなった。これは、シクロデキストリンの分子構造を視覚的に観察した最初の例である。さらに、シクロデキストリンと芳香族化合物の複合体の構造を決定し、それに基づいて、シクロデキストリンを触媒とする選択的反応の機構を分子レベルで解明した
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