含窒素複素環化合物に有用な官能性炭素置換基を高効率的に導入する手法の開発は、様々な生理・薬理活性を有する複素環化合物あるいは医薬品を効果的に合成するためには大変重要な課題である。 平成8年度の研究において、キノリンをクロロギ酸フェニルと銀トリフラートで処理すると、高活性なN-アシルキノリニウムイオンが発生し、アリルシランと速やかに反応することを見出した。また、イソキノリンを用いた反応では2等量のアリルシランが反応して、ベンゾイソキヌクリジン骨格が生成することもわかった。 本年では以上の研究成果に基づいて、反応条件の改良を目指すとともに、アリルシラン以外の有機ケイ素化合物との反応によりアリル基以外の炭素基の導入についても検討した。 本反応は含窒素芳香環上のエステル、ホルミル、シアノ、ニトロ基等に対して、高い官能基選択性を示すが、収率が低い場合がある。そこで、種々検討した結果、反応溶媒をジクロロメタンからアセトニトリルに変えることにより、全般的に収率の向上が認められた。このように塩素系溶媒を使用しなくてすむことは、環境負荷の面から考えて好ましい。また、2位に置換基を有するアリルシラン誘導体を用いた反応においても、良好な収率で付加体が生成した。 次に、アリルシラン以外の有機ケイ素反応剤として、アレニルシラン、プロパルギルシラン、そしてアルキニルシランとの反応について検討した。アレニルシランとの反応では等量の銀トリフラートを用いることにより、プロパルギル基が付加した生成物を収率よく得られた。また、プロパルギルシランとの反応ではアリルシランと同様に、触媒量の銀トリフラートを用いることにより、良好な収率でアレニル基が付加した生成物を得た。さらに、反応性の低いアルキニルシランの時には、等量の銀トリフラートを用いて加熱することにより、アルキニル基付加体を良好な収率で得た。
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