本研究では、カルベンとカルベノイドのアンビフィリシティを任意に制御した連続的な二結合形成反応のなかでも、幻の中間体ともいえる酸素原子とのイリド形成を作業仮説として、合成反応へ系統的に展開する研究を行った。そこでは、エーテル性酸素イリドの寿命が極めて短い欠点を速度論的かつ熱力学的に克服するために、分子内反応として反応設計することに着眼した。 まずは、幻の中間体であるエーテル性オキソニウムイリドを長寿命化できる分子設計に基づき、分光学的手法によるイリド生成の速度論的確認に世界ではじめて成功した。 続いて、類例を見ない独創的発想に基づいて見いだした中・大員環エーテル骨格を構築できる汎用的反応には次のようなものがある。 (1)合成手法が限られた8員環オキソカン、9員環オキソニン、10員環オキソシンなどの構築反応を、分子内オキソニウムイリド形成を鍵反応とする環拡大反応を考案して達成した。 (2)環状エーテルのみに限らず、多様な環状アセタールを原料とする環拡大反応へ展開し、中員環ポリエーテルの高効率な合成反応を設計した。 (3)環状オルトエステルについても同様の環拡大反応を設計し、上記2つの系より格段に優れて拡張できる環拡大反応を見いだし、中・大員環の合成範囲を一段と広げることができた。
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