色素分子を多機能化すれば新たな機能の発現が期待される。本研究では、新規な多機能型蛍光性色素を分子設計し、その合成と外的刺激や環境場の変化に対する蛍光発光応答性(蛍光スイッチング機能)を評価することを目的としている。 1.分子配向の制御による蛍光スイッチング:蛍光性と二色性を併せ持つ新規なキノール系蛍光性色素を分子設計し、液晶用蛍光スイッチング色素として良好な特性を示すことを明らかにした。またこれらの色素の中に、結晶状態で様々な有機溶媒分子をゲストとして包接する機能を有すものがあることを見い出した。ゲストを包接することで結晶の蛍光強度が大きく変化するので、ゲスト包接による結晶環境場の変動情報を蛍光で発信する新規な蛍光性ホストとして非常に興味深く、さらに研究を進めている。 2.電気的制御による蛍光波長スイッチング:電気可逆的酸化・還元が可能なキノイド構造やトリスジピリジルルテニウム錯体を組み込んだ電場変調型蛍光性色素を分子設計し、その合成を行った。現在、分光電気化学測定用電極セルを製作し、合成した色素を用いて蛍光スイッチングの評価法を検討中である。 3.電荷移動制御による蛍光スイッチング:蛍光発光母体である2-スチリルイミダゾアントラキノン(SIMAQ)に、アザクラウン(AC)環を共役的に連結させた新規な蛍光性色素レセプターを分子設計し、それらの可視吸収および蛍光スペクトルによる金属イオン認識情報の発信機能について評価した。 光誘起電子移動制御による蛍光スイッチング:蛍光発光母体であるSIMAQに、AC環を非共役的に連結させた、新規な光電子移動制御型蛍光性色素レセプターを分子設計した。これらレセプターは、金属イオンのサイズと電荷の大きさの双方を認識し、その情報を蛍光強度の増大に適確に変換して発信する機能を有することを明らかにした。
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