研究課題/領域番号 |
08455427
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柳 日ひょん 大阪大学, 工学部, 助教授 (80210821)
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研究分担者 |
南方 聖司 大阪大学, 工学部, 助手 (90273599)
小松 満男 大阪大学, 工学部, 教授 (60029197)
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キーワード | アシルラジカル / S_H2反応 / σ-チオラクトン / 分子内反応 / 5員環環化反応 / T字型遷移状態 / ヒドロゲルマン / 硫黄 |
研究概要 |
アシルラジカル種は求核性を有するσ-ラジカルであり、各種の分子間反応が以前より知られてきたが、その分子内反応挙動は、十分解明されてはいない。本研究ではアシルラジカル種の分子内反応を主題として取り上げ、その興味ある反応特性の解明を行うことを目的とした。平成8年度においては以下のような顕著な成果を得ることが出来た。 アシルラジカルの分子内S_H2反応挙動は、まったく解明されてはいない。そこでアシルラジカルの硫黄元素上での分子内S_H2反応挙動について、5員環チオラクトンの生成系をモデルとし詳細な検討を加えた。その結果、t-プチル基を脱離基とし、硫黄上での分子内S_H2反応が良好に生起することを見出した。またab inito分子軌道法による理論計算を行なったところ、S_H2型の環化に際してはT字型の遷移状態を経由して進行することが示された。この計算結果は脱離にあたっては必ずしも安定なラジカル種を脱離させる訳ではないという別に行なった実験結果とも一致した。また、S_H2型の環化速度の算出も行なった。その結果、対応する一級のアルキルラジカルに比して、反応速度がより早いという興味あるデータが得られた。同族のセレン上でも類似の反応が生起するか、今後、確かめる計画である。 一方、アシルラジカルの分子内二重結合への5-エンド型の環化反応についてはほとんど知られていない。ヒドロゲルマンをラジカルメディエーターとして用いた系でカルボニル酸素上への環化を試みたところ、実際に、5-エンド型の環化生成物を主に得ることができた。一方、この機構的には、実際の5-エンド型環化反応が起こる可能性と、アシルラジカルへの出発基質のヨ-ジド移動を経たイオン型の反応の可能性が考えられ、さらに反応機構を詳細に詰めていく必要がある。
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