研究概要 |
温和な条件でタンパク質にオリゴ糖鎖を結合させる反応をまず調べた。還元剤のNaBH3 CNを用い37℃数時間でタンパク質のモデル化合物であるボリリジンおよびポリアルギニンの側鎖アミノ基に、糖残基数2〜7のマルトオリゴ糖を結合させ得る反応を見出した。糖鎖結合ポリリジンおよびポリアルギニン13CNMRスペクトルにおいて、新規に糖成分の吸収および末端アミノ基の隣の炭素吸収が、未反応物のそれより数ppm離れて現れるので、それを定量した。10当量のマルトース(2糖)やマルトペンタオースをオリゴ糖として用い、85〜90%の糖鎖置換率が得られる条件を見出した。次に、天然の酵素へ適用した。aldolase,lactate dehydrogenase,6-phosphogluconic dehydrogenase,cholinesterase,およびphosphatase alkaline(アルカリフォスファターゼ)に充分量のマルトースを還元アミノ化反応で結合させた。aldolase(9%)を除いた他の4つの酵素は、マルトース結合反応後の活性低下が少なく、元の活性の58〜90%を保持していた。アルカリフォスファターゼにつき、マルトースおよびマルトヘプタオース(7糖)を結合させて、酵素活性を評価した。糖鎖の結合により酵素活性は低下したが、10日〜120日間経過の酵素活性は糖鎖結合により大幅に保持されることがわかった。60℃熱処理の影響を調べたところ、糖鎖結合物は60〜120分後の残存活性がやや高かった。アルカリフォスファターゼについては、糖鎖長の長いマルトヘキサオース結合物の方が、トリオースやペンタオースよりも60分後まで保持された活性値が高かった。糖鎖の結果、長さ、置換度の影響をさらに調べる予定である。また、糖鎖によってタンパク質が受ける影響を解明するため、硫酸化カードラン、コンドロイチン硫酸、ヘパリンなどの糖鎖と、ポリリジン、リジン・アルギニンコポリマーなどのモデルタンパクとの相互作用を、高分解能NMRを用いて調べた。糖の硫酸基とペプチド鎖のアミノ基との間で起こる強い相互作用が、NMRの吸収の顕著な変化として初めて捉えられた。
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