研究概要 |
立体規則性あるいは光学活性含珪素高分子の開発を目的として、光学活性な含珪素モノマー合成法の確立およびそれらを重合して得られるポリマーの立体規則性について検討した。 ペンタンからの[(+)-menthyloxy]methyl(1-naphthyl)phenylsilaneの再結晶により、ジアステレオマー過剰率99%以上のR体を得、それを出発原料に光学活性な(R)-allylmethylphenylsilaneを得た。ラセミ体および光学活性体のモノマーの重付加反応から得たポリマーのタクチシチーを750 MHz 1H NMRスペクトルから評価すると、珪素原子上のメチル基がトライアッドタクチシチーを反映して、ラセミ体から得たポリマーでは、アイソタクチック:ヘテロタクチック:シンジオタクチック=1:2:1の割合で認められたのに対し、光学純度76%e.e.の光学活性体から得たポリマーでは、同比が7:2:1と、モノマーの光学純度をよく反映したアイソタクチシチーを示すことがわかった(Polym.J.,1998,30,1001.)。 さらに(S)-[(-)-menthyloxy](1-naphthyl)phenylvinylsilaneを出発原料に用いて、光学純度がほぼ100%の(1S)-1-(1-naphthyl)-1-phenyl-1-vinyl-3,3-dimethyl-3-hydro-1,3-disiloxaneを得ることに成功した。この重付加反応により、アイソタクチックでかつ光学活性なポリカルボシロキサンを得ることができ、初めて光学活性な含珪素高分子を得ることができた(Macromolecules,1998,31,5592.)。このとき副生した環状カルボシロキサンを用いて、開環重合を行うことにより、さらに分子量の高いポリカルボシロキサンを得ることに成功している(Macromolecules,1999,32,548.)。これらから得たポリマーについては、不斉珪素原子で挟まれた珪素原子上のメチル基の^<13>C NMRスペクトルから見積もることができ、重付加から得たポリマーでは分子量が低いために末端基の効果で幾分複雑に見えたものの、開環重合から得たポリマーのNMRスペクトルでは>99%アイソタクチックであることが示された。 光学活性クロロシランと光学活性シラノレートとの反応により、光学活性ジシロキサンを合成することにも成功しており、その光学純度は、光学活性カラムを用いたHPLCから見積もることができた。さらにこのジシロキサンとBr_2あるいはIClとの反応により、立体規則性あるいは光学活性ポリシロキサン合成のために必要となる、珪素上にハロゲンを有する光学活性ジシロキサンの合成にも成功している(to be submitted to J.Org.Chem.)。
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