蛋白質、核酸、多糖類などの生体高分子は、その両親媒性としての構造特性や水素結合に代表されるような弱い相互作用を利用して、水中で二次・三次構造形成、さらに高分子間の会合・解離を巧みに制御して、様々な高次機能を発現している。このような高分子の会合制御と機能発現機構の解明は、広く高分子分野の重要課題のひとつである。しかし、生体高分子と比べて、比較的簡単な構造を有する合成高分子の場合ですら、その会合体形成を自由に制御することは難しい。我々は、疎水化高分子の水中での自己組織化と構造特性について系統的な研究を行なった。水溶性の多糖やポリアミノ酸に従来用いられてこなかったコレステロール基などの疎水性、会合性のきわめて強い疎水基をほんのわずか(5wt%以下)置換した疎水化高分子が、希薄水溶液中で安定な会合体ナノ微粒子を形成することを見いだした。種々の測定結果から、例えばコレステロール基置換プルラン(CHP)会合体は、4個のコレステロール基が会合した領域を架橋点とするヒドロゲル構造を有することがわかった。高分子の分子量、疎水基の置換度、構造を変えることで、疎水化多糖および疎水性基の会合数、微粒子の粒径、高分子密度、微視的疎水性環境およびその領域分布を制御できることが明らかになった。また、疎水化多糖の濃度を増加させていくと、絡み合いが生じる濃度以上で急激に粘性が増大し、ついには透明なゲルが得られた。疎水性の低分子置換基の自己会合性を利用することで高分子主鎖の折り畳みや高分子間会合を制御でき、その結果単分散なナノ微粒子形成とその構造をも制御できることを示した。この系を利用して生体類似機能の発現やバイオテクノロジー分野での幅広い応用が可能となった。
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