金属タンパク質/二分子膜フィルム電極デバイスの設計.構築と応用に関する研究を行い以下の成果を得た。 1. グルコース酸化酵素の電子メディエーターとして新規に合成したフェロセン誘導体(C16GluFc)を、人工脂質との混合膜フィルムとして電極上に固定化し、電極反応をパルス電解法によって解析した。また、この混合フィルムにグルコース酸化酵素を固定化した電極系で、グルコース酸化酵素の酵素機能を脂質膜の相転移によって制御できることを見出した。 2. 4種の合成したカチオン性脂質のキャストフィルムをそれぞれ電極上に作成し、フェレドキシン(Fd)水溶液に浸漬することにより、脂質フィルム内にFdを取り込み固定化した。固定化されたFdは、気相系および水中いずれも固定化前に比べ、熱に対する安定性が大きく向上した。固定化されたFdの拡散定数(D)および不均一速度定数(k)は、それぞれ(4±2)X10^<-10>cm^2/sおよび(1-1.5)×10^<-4>cm^2/sであった。Dおよびkに対するカチオン性脂質の化学構造依存性は認められなかった。これらの値を基に電極上のFdに対するサイクリックボルタモグラムをシミューレーションプログラムを用いて解析したところ、シミューレーションと実測のボルタモグラムが良く一致することがわかった。以上の結果は、脂質フィルム内に取り込まれたFdは安定性が向上するとともに、電極との速やかな直接反応を行うとともに、膜物性により電子移動制御が可能であることを示している。これらの成果は、金属タンパク質のデバイス化に有用な知見を与える。 3. フラーレンを含むタンパク質・脂質フィルムの設計、作成のための実験としてフラーレン脂質フィルム修飾電極を作成し、この電極系でフラーレンの電子移動が速やかに生じることを見出した。
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