1.流動測定と蛍光顕微鏡観察の併用によるDNA分子の分子物性 溶液中の高分子鎖の動力学的性質の観測のため、高分子のモデルとしてDNA分子を用い以下の測定を行った。 (1)溶媒条件の変化で起こるDNA分子のコイル・グロビュール(CG)転移を伸長流動法で観測し、蛍光顕微鏡観察の結果と比較した。溶媒組成に対する流動複屈折の変化は、蛍光顕微鏡によるDNA分子の広がりの変化に対応することが明らかになった。更に、転移点付近のDNA分子の複屈折応答から、グロビュール状態の分子が伸長流動場で変形することを見いだし、DNAのCG転移が、高分子に特有な散漫な転移であることを結論した。 (2) DNA分子の溶液中での広がりを調べた。伸長流動複屈折の歪速度依存性が2段階となることを見いだした。水溶液中のDNA分子は、ブロッブと呼ばれるサブ構造を内在している可能性が提案されており、全体では「ブロッブの鎖」と見なせる。伸長流動複屈折の歪速度依存性は、先ず、ブロッブ単位での伸長が起こり次にブロッブ内のモノマー単位での伸長が起こると考えると説明できることを結論した。 2.蛍光顕微鏡ステージへ組み込む伸長流動場発生装置の設計・製作 蛍光顕微鏡のステージに伸長流発生装置を組み込み、流動測定と蛍光顕微鏡観察を同時に行うことを目指した。伸長流動場発生装置としては、流動場の制御の容易さからTayler型フォーロール・ミル(FRM)およびクロス・スロッツの2種類を計画した。FRM本体は本学部金属工作室にて現在作成中である。CSの方は、顕微鏡のカバーグラスのフォト・レジストの技術を利用して溝を刻むため、半導体メーカーに作成を依頼し、現在作成中である。
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