研究概要 |
単結晶状に秩序化したP(VDF-TrFE)膜(フッ化ビニリデ-三フッ化エチレン共重合体)は単に強誘電性圧電・焦電材料としてのみでなく,結晶性高分子の諸問題,特に秩序形成と物性・機能を研究するのに極めて適した材料である.本課題では上の観点から,研究を行い,次の結果を得た.単結晶状膜:(1)強誘電-常誘電相転移付近から結晶軸の配向と結晶化が高度に成長すること(2)常誘電相では分子鎖は六方晶に極めて規則的に充填された円筒の中に存在し,それぞれの円筒の中では分子鎖は隣接した分子鎖とは独立にflip-flop運動していること(このモデルは従来から隣接分子間の双極子相互作用を重視したモデルとは異なる.(3)大きいキンクバンドが発生すること(これは局所的に膜中に存在する褶曲部を常誘電相で解消するために生じる)(4)単結晶状膜の複屈折率と電氣光学効果の測定装置を自作し,複屈折率とポッケルス係数γ求めた.γはPVDFで報告されている値より10倍も大きく,実用的なレベルにあること.ブレンド膜:PVDFとP(VDF/TrFE)のブレンドが高温高圧に現れる六方晶相では共結晶化し,耐熱性の圧電材料となること. 来年度は上記各項目について引き続きデータ蓄積を行うが,特に以下の項目について力点を置く.単結晶状膜:(1)マイクロX線によりキンクバンド生成の結晶面の決定(2)ポッケルス係数の各テンソル成分を求め,高分子光学結晶としての適性の明確化(3)常誘電相から強誘電相にいたる温度域における分子鎖運動(誘電・力学緩和現象)の定量化.P(VDF/TrFE)とPMMAブレンド膜:融液からの結晶成長過程,存在状態を明確化
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