本研究では、ヒドロキシ安息香酸とヒドロキシナフトエ酸、またヒドロキシビフェニルカルボン酸とヒドロキシナフトエ酸から合成される二つの系での共重合体(それぞれC-1系とC-2系とする)を合成し、その二次の非線形光学効果(SHG)を調べることで、極性ネマチック相の確認を行ない、以下の諸点を明らかにした。 1.これらC-1とC-2共重合体系は、いずれも頭尾の識別される全芳香族高分子であるとともに、共重合成分のランダムシークエンスのため、高温(280℃以上)においてネマチック液晶を形成する。 2.ネマチック相においてSHGを調べた結果、10pm/V程度の比較的大きな二次の非線形光学効果を示すことがわかり、極性構造を有するものであることがわかった。 3.この極性ネマチック相の発現は、分子量に依存するものであり、分子量がある程度大きくない(7inh>1.0dL/g)と出現しない。 4.繊維試料のSHGを、入射光、反射光の偏光面と繊維軸とのさまざまの角度関係で観測した結果、C-1系はCsの対称性、C-2系は、C_∞Vの対称性を有する極性ネマチック相であることを確認した。これは、C-1系では分子軸に平行方位のみならず垂直な方位にも、極性が存在することを示すものである。
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