昨年度はXeガスを導入した高分子において^<129>XeNMRにより構造情報を得る手法を開発したが、今年度はリチウムをドープしたポリアセン系半導体(PAS)にXeガスを導入し、^<129>Xeの化学シフトのイオン濃度依存性を測定することにより、導電性との関連を究明することを目的として研究を行った。さらに、ポリスチレンに高圧Xeガスが及ぼす影響の研究も併せて行った。 [1]リチウムをドープしたボリアセン系半導体の研究 1)ポリアセン系有機半導体(PAS)にXeガスを導入して^<129>XのNMRスペクトルを測定した。PASに溶解した^<129>Xeのスペクトルの圧力依存性を調べ、PAS内部に存在する小孔のサイズ、数、分布を決めた。 2)2次元交換スペクトルを測定して、各小孔間のXeの拡散現象を調べた。得られたスペクトルを解析することにより各小孔間の結合性を明らかにした。 3)Li存在下で同様の測定を行った。得られたスペクトルを解析し、Liの存在がPASの構造に及ぼす影響を検討した。 [2]高圧Xeガス下でのポリスチレンの研究 4)硬質ガラスや石英ガラスを用いて100気圧程度の高圧に耐えうる試料管および高圧ガスを含んだ試料管を高速回転できるNMRプローブを作製した。 5)その試料管内にポリスチレン(PS)とXeガスを導入して^<129>XeNMRスペクトルを測定した。そして高圧Xeガス下におけるPSの固体高分解能^<13>CNMRスペクトルや^<13>C核の緩和時間を測定した。得られた^<129>Xeと^<13>CNMRの実験結果よりXeガスが及ぼすPSへの影響を明らかにした。
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