研究概要 |
本研究においては,多重層間剥離を有する複合材料積層板の圧縮座屈挙動と圧縮荷重下の振動特性の理論解析と実験解析を行った。 まず,単一層間剥離を有する複合材料積層板の圧縮座屈と座屈後挙動を理論解析するとともに,実験を行った。座屈については,剥離の存在による座屈荷重の低下と,剥離長さおよび剥離位置の関係を明らかにした。座屈後挙動に関しては,積層板の剥離部が低い荷重で座屈するが,その後も積層板の荷重は増加することを見出した。その際,剥離部の厚い方の積層部では軸荷重は上昇するが,薄い方の積層部では軸荷重はほぼ一定に保たれる。また,座屈変形の進行に伴う層間剥離先端でのポテンシャルエネルギ解放率を求め,座屈による層間剥離の進展の可能性があることを示した。 次に,多重層間剥離を有する複合材料積層板の圧縮座屈挙動の理論解析と実験解析を行った。座屈については,多重層間剥離の存在により座屈荷重が大きく低下することを示した。そして,座屈後挙動については,単一層間剥離の場合と同様に,座屈後も積層板の荷重が上昇することを見出した。また,座屈変形の進行に伴う層間剥離先端におけるポテンシャルエネルギ解放率を求め,座屈に層間剥離の進展の可能性が高くなることを示した。 本研究の座屈挙動の理論解析の特色は,解析解を求めたことであり,これを有限要素法による数値解析と実験によって検証している。 最後に,多重層間剥離を有する複合材料積層板の面内圧縮荷重下の振動特性を解析した。まず,面内荷重のない場合の層間剥離を有する積層板の固有振動数と固有振動モードを理論解析するとともに,実験を行った。そして,層間剥離存在による振動数の低下と層間剥離長さおよび層間剥離位置の関係を明らかにした。次に面内荷重下の層間剥離を有する積層板の振動特性について理論解析と実験解析を行い,面内荷重による振動数の低下を解明した。 振動特性の解析結果は,積層板の振動特性から層間剥離の存在を探知する方法の開発に寄与するものと考えられる。
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