研究概要 |
翼の層流制御に関する従来の研究では境界層吸い込みが重要視され,新規な提案がほとんどなかった。本研究では境界層の受容性と不安定性の両面に着目した新しい制御手法を開発するための基礎研究として,平成8年度は次の(1)〜(3)の研究を行った。 (1)主流マッハ数M_1=2.2の超音速境界層の受容性と不安定性を数値計算で調べた。まず,境界層速度分布に一般化変曲点が存在することによる変曲点不安定が支配的であり,層流制御の観点から重要であることを示した。次に,僅かな加速(膨張斜面)によって,超音速境界層が容易に安定化されることを確認した。さらに,外乱の受容性に関し,超音速境界層(M_1=2.2)受容性が非圧縮流の場合の1/10程度(生成される攪乱の振幅で比較)で極めて小さく,層流維持に有利であることを明らかにした。 (2)超音速後退翼のアタッチメントライン境界層の受容性に関し,3次元層流境界層を把握するため数値計算(M_1=2.5)を行い,前縁部境界層流れの解を得て,横流れ渦形成過程を明らかにした。 (3)後退翼境界層特有の不安定性として,横流れ不安定に加え,流線曲率に依存する不安定性が存在し,臨界レイノルズ数が横流れ不安定性よりも小さいことを示した。また,アタッチメントライン境界層の亜臨界不安定性に関し,ヘアピン渦タイプの強い攪乱を導入した場合の遷移過程を実験的に詳しく観察し,新規の知識として,ヘアピン渦の再生成に必要な流れ方向の距離が境界層厚さの10〜20程度であること,主流動圧と運動量厚さで無次元化した順圧力勾配が1.3×10^<-3>程度の加速でもこの亜臨界不安定性が顕著に抑制されること,などを明らかにした。
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