研究概要 |
境界層の受容性と不安定性の両面に着目した境界層制御手法を開発するための基礎研究として,平成9年度は次の(1)〜(3)の研究を行った。 (1)主流マッハ数M=2.2の超音速境界層の受容性と不安定性を数値計算で調べた。まず,境界層壁上の局所領域にn=F(x)exp(-iωt)で記述される流れ方向の変動速度を与えたときの境界層の受容性に着目し,励起されたTS波(波数α)の振幅がF(x)のフーリエ変換の波数α成分に比例することを明らかにした.次に,マッハ波を境界層に入射させたときの受容性について試計算を行っている.さらに,境界層吸い込みに関し,接線吸い込みを検討する数値計算を準備している. (2)(1)の問題は弱い撹乱対象であるが,アタッチメントライン境界層に関する研究では,強い撹乱(境界層壁の孔から周期的噴流をだす形の撹乱)を扱い,斜行渦の形成過程の計算を行って,ヘアピン渦の脚部に対応するの縦渦構造をとられている.縦渦に伴って壁面摩擦応力が層流の場合の5倍になる段階まで流れを追跡した. (3)横流れ,流線曲率が絡む不安定については,点源撹乱の発達過程が明らかにされ,また,分散関係を利用して,撹乱を同定する方法が検討された.次に,亜臨界遷移における加速効果について詳しい観察がなされた.高亜音速機の着陸時における翼前縁部での順圧力勾配に相当する加速条件のもとで,亜臨界遷移の下限レイノルズ数を調べたところ運動量厚さに基づく値で約300が得られた.ただし,乱流域の横方向の広がりは小さく慎重な判断が要求される.この下限値は実用上重要であり,観察を継続する必要がある.
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