研究概要 |
境界層の受容性と不安定性の両面に着目した境界層制御手法を開発するための基礎研究として,10年度は次の(1)から(3)の研究を行った. (1) 入射マッハ波に対する境界層の受容性を数値シミュレーションで調べた結果として,その応答は強制解がほとんどを占め,同次解すなわちTS波が現れないという結論を得た.これは従来の予測を覆す結果である.この結論は研究の重要なポイントとして慎重に判断すべきであり,ポテンシャル流の解が容易に得られる撹乱を扱い,その外乱と境界層の応答との相関を評価する方法によって前述の結論に達した.また,懸案の接線吸い込みに関する研究も継続している. (2) 超音速平板境界層に強い周期噴流を導入し,強い撹乱が乱流遷移に及ぼす影響を調べた.その結果,亜音速流においてみられるようなA型渦が存在し,乱れの生成や壁面摩擦応力の増加に大きく寄与するが,その影響域は非常に局所的であり,また,壁面からある程度離れた高さに達しない渦は粘性によりすぐに減衰していくことがわかった.すなわち,このような撹乱の成長には臨界的な条件があるといえる. (3) 層流制御を実用する上での障害の一つは強い撹乱による亜臨界遷移である.そこで加速効果で亜臨界遷移をどの程度抑制できるかこの2年間実験的に慎重に調べてきた結果,臨界レイノルズ数(運動量厚さに基づく)として約300を得た.次に,三次元境界層に固有の横流れ不安定場に関し,点源からの撹乱の成長において,横流れ不安定の定常成分と非定常成分(進行波)からなる撹乱が楔状の領域を形成しつつで成長する様子が明らかにされた.
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