研究概要 |
アズキ(Vigna angularis)は我が国において重要なマメ科作物であるが、その遺伝・育種学的研究は非常に少なく、遺伝子の連鎖地図も作成されていない。そこで本研究は、アズキ育種の効率化や育種計画の推進に寄与するため、アズキとその近縁種との雑種集団を用いて、(1)分子マーカーによる連鎖地図を作成すること、(2)この連鎖地図上に農業形質を支配する遺伝子を位置づけること、などを目的として行うものである。本年度は主として、アズキ×ヒメツルアズキ(V.nakashimae)の種間交雑で得られた80個体のF_2植物およびその後代を用いて、以下の成果を得た。1.裂莢性、胚軸色、胚軸色の濃淡、種子表面の黒斑の有無、莢色およびへその突出の有無に関する遺伝解析を行い、これらはいずれも単一の主働遺伝子(それぞれをSp,Ps,Isc,Bm,DbpおよびChcと命名)に支配されていることを明らかにした。2.交雑に用いた両親間にRAPDを生じさせるプライマーを用いてF_2植物のRAPD分析を行い、108のRAPDマーカーを検出した。さらに、各F_2個体に由来するF_3系統(1系統10個体)のDNAと、ササゲ、リョクトウなどの連鎖地図作成に使用されたDNAプローブを使用して、19のRFLPマーカーを検出した。3.上記によって得られたRAPDとRFLPマーカーおよび主働遺伝子に関する連鎖解析を行い、14の連鎖群からなる全長1250cMの連鎖地図を作成した。4.F_2個体およびF_2系統の草丈、開花期、種子重などの量的形質を調査し、QTL解析を行った結果、9つの連鎖群上に合計17個のQTLが検出できた。 現在、タケアズキ(V.umbellata)×アズキの雑種集団を用いて上記と同様の解析を行っている。また、より厳密なQTL解析を行う材料とするため、2組合せの雑種集団について組換え近交系を育成しつつある。
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