研究概要 |
今年度は,タケアズキ(Vigna umbellata)×アズキ(V.angularis)の組換え近交系を用いたQTL解析および主働遺伝子のマッピングを行うための基礎として,F_5世代54系統(1系統14個体)を用い,いくつかの農業形質および種子貯蔵タンパク質を調査・解析した。また,RAPD分析法により,アズキ在来品種の遺伝的変異を解析した。得られた成果は以下のとおりである。 1. 54系統の草丈,開花期,分枝数,蔓化程度,および初生葉の長さと幅を解析したところ,いずれの形質も,その系統平均値はタケアズキ型からアズキ型にわたる連続的な変異を示し,これらが多数の遺伝子に支配される量的形質であることが確認された。2.種子貯蔵タンパク質の電気泳動を行い,両親間に多型の認められた7本のバンドのそれぞれについて,F_5植物に実った種子における出現様式を調べたところ,供試54系統中27〜40系統は遺伝的に固定していたが,残りは系統内で分離が認められた。3.F_5世代ではまだ分離系統が多いことが明らかとなったので,より固定度の高い組換え近交系の育成を目的として、F_6世代71系統(1系統14個体)を新たに栽培し,草丈,開花期などを調査するとともに,DNAマーカーによる連鎖地図作成のため,DNAを抽出した。4.日本、中国、韓国、ネパール、ブータンなどの在来アズキ179系統を用いてRAPD分析を行った。その結果,全部で325本のバンドが検出されたが,そのうち252本(78%)はすべての系統に共通して認められ,在来アズキのDNAレベルでの遺伝的多様性は比較的小さいことが明らかとなった。73本の多型バンド(RAPD)にもとづいてクラスター分析を行ったところ,供試系統はブータン,韓国および日本の3群に大別できた。
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