イネの栽培化に伴って変化した多くの量的形質を支配する遺伝子座(Quanintative Trait Loci:QTL)を同定し、それらの染色体上でのネットワークを解析することによって、栽培化の機構の遺伝的基礎を明らかにすることを目的とした。栽培イネと野生イネの交雑由来の実験集団を用いて以下のような結果を得た。 1.Recombinant Inbred Lineを用いたQTL解析: 両親の間で多型を示す140個の分子マーカーの変異をF_6の125RI系統について調査した。2年間にわたって調査した32形質の変異とマーカーとの共分離を解析ソフトqGENEを用いて分析したところ、統計的に有意なQTLは、22形質でそれぞれ1〜24個計176個が見出された。それらは異なる染色体に広く分布しており、それぞれの遺伝子は、表現型分散の20%以下を説明する作用力の小さいものが大部分であった。各染色体上のQTLの分布は一様ではなく、異なる形質のQTLが適応的な遺伝子作用を示す組合わせで特定の領域に連鎖している傾向が認められた。 2.脱粒性選抜に対する相関反応: この交雑組合わせのF_3以降を脱粒性と非脱粒性の2方向に集団選抜を続けてきた2群から各100個体を栽培し、上記の実験と同様に各種形質と分子マーカーの変異を調査した。脱粒群は非脱粒群よりも、晩生で再生力が強く休眠性の強い個体が多くなっていた。マーカーの遺伝子頻度を両群で比較したところ、有意差を示すマーカーが多数見出された。それらは4個の脱粒性のQTLに連鎖すると思われるものばかりでなく、それ以外の領域からも見出された
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