研究概要 |
低水温に対する水稲の生育・収量反応の品種間差を明らかにするために,栄養生長期,生殖生長期(以下,栄養期,生殖期)の2時期に圃場条件下で冷水掛け流し処理を行い,水口からの温度勾配に従い3水温区を設けた(以下,低,中,高温区)。供試品種は耐冷性強のほしのゆめ,やや強のきらら,やや弱のしまひかりで,処理日数は21,33日とした。低温区の平均水温は各時期それぞれ17,16℃で,高温区との差は5〜7℃であった。栄養期における低温区の乾物生産は,高温区の24〜45%と著しくされ,葉面積が比較的大きかったしまひかりが他の2品種を有意に上回った。生殖期処理も乾物生を有意に減少させたが,その程度は14〜35%と栄養期に比べ小さかった。また,栄養期の低温区で比高い乾物生産を示したしまひかりは,生殖期中温区においても乾物抑制程度が小さかったが,同期の乾物重は最も大きく抑制された。収量も両時期の処理により有意に低下したが,生殖期処理の(48〜100%)は栄養期処理のそれ(10〜21%)よりも著しく大きかった。減収の主因は栄養期穎花数不足,生殖期処理が稔実および登熟歩合の低下であった。栄養期処理の収量に顕著な品種間差は認められなかったが,処理期間中の乾物抑制程度が小さかったしまひかりでは低,中温区ともに花数が多い傾向にあった。生殖期処理では,特に中温区(19℃)において極めて大きな品種間差が認められ,きらら397,しまひかりがほぼ収穫皆無となったのに対し,ほしのゆめでは高温区に対して約の収量が得られた。稔実歩合は葯長と正の相関を示したが,中温区の葯長はいずれの品種も同様であったことから,水温約19℃における稔実歩合の品種間差を葯長から説明することは困難であった。
|