研究概要 |
昨年までの試験により,出穂期から登熟期にかけての水稲の挫折抵抗の低下には品種間で顕著な差があり,かつ,その低下程度は節間の澱粉粒の消失とともに,節間柔細胞の細胞壁の厚さの減少とよく対応していることが明らかとなっている.本年度は,出穂後の挫折抵抗の変化を異にすると予想される3品種を用いて,出穂後の挫折抵抗,柔細胞壁の厚さの変化を調査するとともに,細胞壁構成成分であるペクチン,ヘミセルロース,セルロース含量の経時変化を調査し,相互の変化を検討した.本年度の試験においても,挫折抵抗の変化は細胞壁の厚さとの間に比較的高い相関を示した.同一の材料につき細胞壁構成多糖の組成を調べたところ,ペクチンが非常に少なく,ヘミセルロースがセルロースよりやや多かった.出穂期と登熟期とで含量が大きく変化している分画はヘミセルロースとペクチンであり,3品種とも登熟中期には出穂期の半分程度までに減少していた.このうち,ペクチン含量は挫折抵抗に影響を与えるほど高くないため,ヘミセルロース含量に注目し,このヘミセルロースの減少と細胞壁の厚さおよび挫折抵抗との関係を検討したところ,相互に有意な相関を示した.なお,セルロース密度と細胞壁の厚さとの間には相関が認められなかった.以上の結果から,ヘミセルロース量の減少が細胞壁の厚さの減少に関わり,これが挫折抵抗の減少となんらかの関わりをもつ可能性が考えられた.
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