研究概要 |
計画初年度にあたる平成8年度には、主として土壌の各部分に分布する根群の機能および根系発育の制御方法について研究し,作物の根系機能を効率的に利用するための基礎的知見を得ることに努めた。 1.コムギの冠根の発育を制限して初生種子根1本のみを有する個体として成育させる実験系を用い,登熟期には初生種子根1本のみで総根長が通常個体の根系の約80%にまで達すること,地上部の生育,収量も通常個体とほぼ同程度に達することを示し,コムギ根系における種子根の機能的重要性を明らかにした。また,生育の詳細な検討の結果から,コムギの根系機能を十分に発揮させるには幼穂形成期以降における冠根の役割と種子根の老化の防止の重要性を指摘した。 2.大型ポットで生育させたコムギ根系の分枝根の発育過程を経時的に観察した結果,いずれの種子根あるいは冠根においても母軸上の2次根の分布密度には大きな変動はなく,母軸の基部から先端部に向って部位別の最長2次根長が短かくなること,2次根上の3次根の形成も同様のパターンを示すことから,コムギの分枝根形成は通常の条件下では相似生長的に進行することを明らかにした。 3.大型ポットで生育させたダイズ根系の分枝根の発育過程を経時的に観察した結果,ダイズでは,主根基部に形成される数本の2次根が発育の経過に従って他の2次根に比べて著しく発達して,開花期以降には全根系の総長の約1/3から半分に達することを示し,ダイズ根系の発育を制御する際の重要な着眼点となることを指摘した。
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