研究概要 |
平成10年度は最終年度にあたるので,一昨年度および昨年度までに得られた成果を考慮して,根群の量あるいは器官間の発育の相互関係を変化させる実験を設定し,茎葉部の生育反応や物質生産構造に及ぼす影響について検討するとともに,引き続き根系の発育習性を解明し,根系発育制御機構に関する新たな知見を得ることに努めた. 1. ダイズ根系の生長可能な土壌領域を変化させる実験系を用い,十分な養水分供給下においても根群領域を制限すると個体の生長は地上部・地下部共に抑制されること,その後,根群領域の制限を解除して生育が急速に回復する場合,葉面積・総根長比の低い個体となることを示した.また,その場合,主根基部の長大な2次根の発育が顕著であり,ダイズ根系の発育量が変化する際の上記2次根の重要性を示した. 2. すでに幼穂形成期に根量の多くなることが判明している日印交雑水稲について,幼苗期の根群形成を調べた結果,幼苗期の根群形態は幼穂形成期と異なることを示した. 3. ダイコンの幼植物に種々の濃度のキトサンを処理した結果,水稲と同様に主根に形成される2次根の密度が高まるが,主根の伸長促進も引き起こすことを見出した. 4. 水稲に比べて生育が旺盛といわれるタイヌビエの生育および地上部・地下部関係を解析し,タイヌビエのみを密植するとイネに比べて地上部・地下部比の低い個体となること,イネとの混植条件下では生育初期にはに地上部・地下部比は高いが,生育後期に低くなることを認めた. 5. また,昨年度未報告であったサツマイモ根系形成過程のパイプモデルによる解析,およびトウモロコシの根群量と地上部の発育の量的関係に関する成果を公表した.
|