研究概要 |
夜温を37℃に維持し昼温を30℃にしたときにベンケイソウにおいてCAM型CO2交換の日変化がnon-CAM型の日変化へ変化する.本年度は,その原因を解糖系の中間代謝産物の動態と解糖系の制御部位と予想されるホスホフルクトキナーゼ(PFK)のクロマトグラフィーによる分離特性について検討した.解糖系中間代謝産物の動態で最も注目される結果は,37℃夜温下においてベンケイソウにおいてグルコース6リン酸(G6P)の夜間おける増大がなくなることであった.G6Pは,夜間の炭酸ガス固定を行うPEPをカルボキシラーゼのリンゴ酸による活性阻害を緩和する物質として知られるものである.高夜温下の細胞質でのリンゴ酸レベルを計算すると,3〜15mMとPEPカルボキシラーゼの活性阻害をもたらすのに充分なレベルになっていることが推察された.つまり,ベンケイソウにおける37℃夜温下でのCO2吸収の消失は,細胞内のG6Pレベルの低下によりリンゴ酸によるPEPカルボキシラーゼの活性阻害の緩和が充分に機能しないことがひとつの原因となっているものと考えられる.次に,パインアップルにおいてピロリン酸依存PFK(PPi-PFK)を夜間に抽出し,イオンククロマトグラフィーとゲルクロマトグラフィーによる分離特性を調査した.イオンクロマトとゲルクロマトの双方において,PPi-PFKは昼間に抽出した場合と同様な溶出時間に2つのピークとして同定された.しかし,イオンクロマト上で溶出時間の早いタンパクをP-1,遅いタンパクをP-2とすると,ゲルクロマト上ではP-2タンパクにはP-1タンパクの混在が認められた.つまり,パインアップルのPPi-PFKのP-1タンパクは昼夜において,荷電状態を異にして存在していることが明らかになった.
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