青果物のエチレン生合成の内的調節機構の分子レベルでの解析の一環として、本年度はトマトのLE-ACS2とLE-ACS6遺伝子の制御領域のクローニングとガス・トランジェントアッセイによるプロモータ活性の測定ならびにバナナのエチレンレセプター(ETR)遺伝子のクローニングと発現解析を行った。 1. LE-ACS2およびLE-ACS6遺伝子の制御領域をそれぞれ2400および2272bpクローニングし、GUSコンストラクトを作製して、未熟および成熟果実切片に導入してGUS活性を測定した。未熟果では、ACS2の活性はみられなかったが、ACS6は強い活性を示した。この未熟果での両遺伝子のプロモータ活性は、プロピレン処理により完全に逆転した。一方、成熟果では、ACS2は強い活性を示し、ACS6の活性は弱かった。この成熟果でのACS2の強い活性は、MCP処理により完全に消失したが、ACS6の弱い活性には変化はみられなかった。さらに、デリーション操作によりシス・エレメント部位を調べたところ、ACS2には-1493bpまでに、ACS6には-2400〜1493bpと-695〜-308bpの間に、その存在が伺われた。これらの結果は、ACS2はエチレンによるポジティブ制御を、ACS6はネガティブ制御を受けるとする前年度までのインタクト果実での結果を強く支持していた。 2. バナナ果実からは、3種のETR類似遺伝子のcDNAがクローニングできた。その発現をノーザン分析により解析したところ、ETRl遺伝子のみの発現が強くみられたが、未熟から完熟までの変化はなく、またエチレンやエチレン作用阻害剤であるMCP処理の影響も受けなかった。従って、本遺伝子はエチレンによるフィードバック調節を受けておらず、さらにバナナ果実特有の成熟初期における鋭いエチレン生成のピークにも関与していないように思われた。
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