モモ果実における渋味の発生要因を明らかにするため、13園の‘白桃'成熟果実についてフェノール含量を比較した。フェノール含量は、同一園での樹体間や果実間よりも果樹園間で大きく異なり、最も多い園では最も少ない園の約3倍であった。しかし、果実のフェノール含量と生産地、樹齢、果実重、糖含量などとの間には関係がみられなかった。果実のフェノール含量と土壌pHとの間には関係がなかったが、土壌ECはフェノール含量の多い園で僅かに高い傾向であった。 ‘白桃'果実のフェノール含量が園によって異なる背景を検討した。フェノール含量は、各園とも果実発育第2期にピークに達し、その後は成熟期に向けて減少したが、成熟時のフェノール含量が多い園ほど第2期の含量も多かった。果実のフェノール含量と新梢生長からみた樹勢の強弱および土壌水分含量との間に関係がなかった。フェノール生合成のキー酵素とされているPAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ)の活性は、果実発育第1期に高く、しかもフェノール含量が多い園ほど高かった。しかし、フェノール代謝に関与するとされているN、Mn、CuおよびBの果実中の含量とPAL活性との間には明確な関係がみられなかった。 12品種の成熟果実についてフェノール含量を比較したところ、箕島白桃とゴールデンピーチで最も多く、大久保、白桃などがこれに次ぎ、川中島白桃やネクタリンで少なかった。フェノールの分子量は、果実発育第1期に大きく、第2期に低下し、第3期に再び大きくなる傾向であったが、ネクタリンでは成熟期でも小さいままであった。HPLC解析の結果、いずれの品種でも6つ以上のフェノール性物質が検出され、そのうち同定できたカテキンとクロロゲン酸は、ほとんどの品種で硬核期まではクロロゲン酸よりもカテキンが多かったが、成熟期にはクロロゲン酸が多かった。
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