研究概要 |
尿素,硝酸,アンモニウムを培養液に与え,異なる窒素濃度,培養液pH,液温,ニッケル濃度でトマト苗を水耕した.その結果, 1) 尿素単用ではトマト葉中のT-N濃度は低いのに尿素濃度は高いことから,尿素を単用した場合にトマトの生育が劣るのは,トマトが尿素を吸収,利用しにくいことが主な要因になると判断した. 2) 尿素の同化にはNiが必須であるが,Niを培地に添加しても尿素では硝酸よりも生育が劣った. 3) ^<15>Nを利用して,苗,開花期,果実肥大期,果実収穫期に与えたNの吸収・分配並びにその後の転流を調査した.尿素の吸収量は生育段階によって変化し,幼苗期には硝酸の25%であったが,その後の生育段階では80%まで増加した.同様に,尿素の転流は苗では制限されたが,その後の生育段階では硝酸と同じように早かった.施与直後の^<15>Nは,尿素と硝酸では葉身に,アンモニウムでは茎と果実に多く分布した.開花期,果実肥大期に吸収した^<15>Nは,それぞれ収穫期には果実並びに上位部分に多く転流した.葉面施与した尿素は良く吸収され,同化も早かった.以上のように,栄養成長期にあたる苗の段階では,尿素は吸収,転流が少なく,同化も遅いのでN源にはなりにくいが,生殖成長期には栄養成長期と大きく異なり,吸収,転流,同化は増加するので,この段階では尿素も良いN源になると考えられる. ^<45>CaCl_2溶液をスポット状にして,植物体のさまざまな器官や部位に与えて吸収と転流を比較した.その結果,葉に与えたCaは表よりも裏から良く吸収され,先端方向へのみ移動して,基部方向や他の器官へは転流しなかった.莱柄基部に与えたCaは植物体の他の器官に与えた場合より良く吸収,転流された.この時,Caは直上の葉と植物体先端部分に良く転流した.Caは果実表面からも良く吸収され,果実内部に拡散した.これらの結果は,オードラジオグラフィーによっても明確に確認された.
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