研究概要 |
今年度は植食性膜翅類のカブラハバチの性配分を中心に研究を行なった。カブラハバチは16L8D,25℃条件下で飼育した。羽化雌成虫は未交尾または交尾後、1日3時間、約10日間にわたってダイコンの葉に産卵させた。産卵後3日目の卵を解剖し、胚分裂プレパラートを作製し、染色体を観察して、染色体数から卵時点で雌(2n=16)、雄(n=8)を判定した。また、この方法と平行して、眼点欠色突然変異体を利用して、胚の眼点の色彩の有無から、卵の雌雄を判定する方法も用いた。結果は以下の通りであった。 1.1回交尾雌による一次性配分のパターンには規則性がみられた。産卵開始1〜3日目では雌比は著しく高く(100〜70%)、4〜6日目には顕著に低下し(60〜20%)、7日目以後は受精卵である雌卵を産むことはなく(0%)、全て未受精卵であった。室内実験による10日間の平均雌比は約70%、また、野外における二次雌比は60〜70%であった。 2.雌雄産下と産卵前時間との間には有意な相関があった。雌成虫は鋸状の産卵管で寄主植物の葉を切り裂き、一旦静止(産卵前時間)の後、産卵する。産卵前時間は受精卵を産む時の方が、未受精卵を産む時に比べ顕著に長く、不受精卵産下の場合により時間をかけていることが明らかになった。 3.1回交尾により、雌受精のうに貯えられる精子数は平均約1万で、1卵の受精に約150の精子が使われ、産卵しない場合でも、1日約900の精子が消耗されることが推察された。 4.重交尾により、雌比および産卵数に回復がみられた。 5.交配に蛹色突然変異体を用いることにより、重交尾した雌はその後は必ず2回目交尾雄の精子を受精に利用した(P2=1.0)。
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